慶應義塾大学 Keio University GICセンター Center for Global Interdisciplinary Courses

Interview 03 大学の授業におけるAI活用の探求 2025/1/11

認知言語学 小原 京子
自然言語処理 鈴木 久美

1.なぜAIは誰もが考えるべきテーマなのでしょうか?

AIは瞬く間に私たちの生活に浸透してきました。そして日夜進歩を続けています。AIとのより良い付き合い方や共存の仕方を主体的に考えていくことは今大学で学ぶ皆さん全員にとって重要です。私たち人間がもっている知識や理解の仕組みと比較しながらAIの仕組みを学ぶことで、現在のAIの得意分野と苦手分野、可能性と今後の課題を冷静に把握しAIをより有効に活用できるようになります。

2.この授業では、「大学の授業におけるAI活用の探求」というテーマに対して、具体的にどのような学際的アプローチをとるのでしょうか?)

生成AIについて学ぶ際には二つの視点からアプローチすることが重要です。一つは、言語科学の視点です。これは人間の言語の特性や人間の言語処理メカニズムを研究する立場です。もう一方は、自然言語処理(NLP)の視点です。人間の言語をコンピュータにいかに処理させるかを探求する視点です。 この授業では、各トピックを言語学と自然言語処理の両方の立場から議論します。言語学の視点からは、人間の知識や能力との比較に焦点を当ててAIを検討します。NLPの観点からは、人間と同等の結果を生成・処理させるためのAIの仕組みを学びます。

3.この授業を取ることで学生は何が得られると考えていますか?

まず、自分が生まれてから習得してきた言語使用に関する能力や膨大な暗黙知に気付けるようになります。さらに、AIの仕組みを学び、人間の言語理解との類似点や相違点について考えることで、AIをより有効に活用できるようになります。 さらに、「AIは本当に『知的』なのか?」や「AIは本当に人間の言語を『理解』しているのか?」といった問いに対して、十分な知識と理解を得て自分自身の意見を持てるようになることを期待しています。新しい技術やツールをやみくもに使おうとするのではなく、その背景や仕組みを冷静に学んで自らや社会の役に立てようとする姿勢は、大学での学びにおいてのみならず社会に出てからも皆さんの武器になるはずです。

4.どのような学生にこの授業を履修してほしいですか?

新しい技術を使いこなそうとするだけでなく、その技術の背後にある仕組みについても学びたい、と考える学生を歓迎します。そして、私たちが日夜言語を使って意思疎通を行なっている背後には、私たちが普段意識することのない素晴らしい能力や知識(暗黙知)が隠れています。自分の持っているそのような能力や知識を、生成AIという新しい視点から見つめ直そうとする皆さんに受講してもらいたいと考えています。

*所属・職名等は取材時のものです。